「正論」は怖い。産經新聞社の『月刊正論』ではなく、もともとの普通名詞の正論、“正論を振りかざす”の正論である。正論が群れをなして異論や反論を押し潰してしまうのも怖いけれども、もっと怖いのは自分が意識しないうちにズルズルと正論のように寄せていってしまうことだ。
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いいじゃないのー、少しはそうしてマトモになんなさいよ、とおっしゃる? いや私はマトモになんかなりたくないのである。マトモになるためにこうしてブログを書いているのではない。私が歩むべき道は正論より異論、尊敬より顰蹙、金満より貧乏と決めている。そう、最高にモテないやつ。
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だがしかしそんな私でも放っておくとズルズルと正論のほうに寄せていくのである。やはりバカなのか? そうも思いたくないのでボウッと考えてみるに、特定のドグマ(教義・信条)をもたずに異論を書き続けることはけっこうたいへんなのだと気がついた。そうとうクセが強く、深く染みついていなければならぬ。
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しかしたいへん残念ながら私はほんとうは素直ないい子であるらしく、すぐクセの底がついてしまうのである。底がついてしまったらそこで止めてしまえばいいものを、たとえばこのブログは1000回は続けると決めてしまったし、ときどき話題が変わっていけば浅くたいしたことのないクセであってもそのつど語るべきことは出てくる。
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問題は興味深い話題がないように思えるときである。とりあえず“書く”ということに決めているのでとにかく行き当りばったり書きはじめる。最低限、誤解されても困るしなー、とか、これ以上書くと嫌われるだろうなー、とか考えながら。するとズルズルと正論に寄っているのである。つまらなぁーうぃ(by藤森慎吾)文章になる。そんなものわざわざ世のなかのゴミを増やしているようなものである。
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つまりいま私のお話している“正論”とは、ただ「世間に受け容れられやすい・認められやすい意見」なのである。皮肉な意味でのポリコレ(political correctness)。正論より異論、尊敬より嘲笑、金満より貧乏などと威勢のいいことをいっておきながら、確実に実践できているのは3番目の貧乏だけである。
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いや、これ知らず知らずのうちにこうなるのである。誤解されても困るしなー、とか、これ以上書くと嫌われるだろうなー、と考える時点で敗北だとおっしゃられるかもしれないけれども、誰にも読まれないのでは意味がない。ジレンマである。で、「世間に受け容れられやすい・認められやすい意見」がほんとうは怖いのだとつねづね思っているのに、気がつけばズリっとそちらへ寄っている。そうなる。クセが浅いので。
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より多くの不特定多数に見てもらうことをめざすテレビなどマスメディアではこれはむしろあたりまえのことであって、いっそう意識的に行われる。そのなかで個性的な意見だとか、まあ異論だとかはどだい無理なお話なのである。
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ときどき、あら、すんごいこというのねこの人、と思っても番組単位ではきちんとフォローされ収拾がつく。つまりすんごいことをいうそいつは、目覚まし代りの色もの、都会のスタジオにたまたま紛れ込んだバーバリアンの役割を担っているのである。
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ではそんな“正論”を語らずにすますにはどうすればいいかというと、自分の経験を語る方法がある。実体験も底が浅いので私は滅多にやらない。ちょうどお手本になる記事があったのでご紹介しよう。『トピックニュース』(2017年6月12日配信)からである。
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【杉村太蔵 信用できない人間像を激白「飲みの席でファンだと言ってくる人」】
《12日放送の「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)で、元衆議院議員のタレント・杉村太蔵が、“信用できない”人間像について熱弁する場面があった。
番組では冒頭から、17歳女子高生との飲酒・淫行報道によって、無期限の活動休止を発表した俳優・小出恵介について特集した。
酒を飲むと人格が変わるという小出のエピソードを紹介する中、司会の宮根誠司からコメントを求められた杉村は「若い俳優や、これから立候補を考えている若い人に考えてもらいたい」と前置きしたうえで、飲みの席で「ファン」だと言って近づいてくる人は信用できないと持論を語った。
杉村は「飲んでてね、例えば『太蔵さんのファンです』って言ってくる人がたまにいるワケ」「こんな人ほど信用できない人はいないからね!」と声を荒らげて、訴えたのだ。
さらに杉村が「だいたい、世の中に杉村太蔵のファンがいるワケないだろ!」「こういう奴は何を考えているか分からない!」「危ない!」と、酒の席で初対面にも関わらず好意的に近寄ってくる人に対する危機感を訴えると、宮根は「アンタ、だいぶひねくれてるね」とツッコミを入れ、笑いを誘った。
杉村が熱弁を振るうその背景には、杉村自身が衆議院議員に初当選をした直後に「金と女には気をつけろ!」と、厳しく指導されたことにあるのだという。》
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杉村太蔵(37)は自分の経験談の態で、暗に5月9日の夜、小出恵介と飲んでいたセラミック(またはプラスチック)おじさんたちが「何を考えているか分からない!」「危ない!」と語ったわけである。すでにネット上では顔も経歴もバレている一般人を直接非難することはできないので。さらにこうして自分の経験として語られると、わざわざそれを否定することもないという気持になる。
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余談であるけれども、杉村大蔵のいっていることは一般論として正しくひとつの傾向を切り取っている。私の素直ないい子時代の経験からいっても、転校していった先でいちばん最初に調子よく話しかけてきたヤツは全員、例外なくイヤなヤツであった。からかいの気持で近づいてきたヤツは不思議にいなくて、八方美人のお喋り野郎とか、なにごとにも打算的で嫌われているヤツとか。
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おお、私にも子どもたちに遺すべき人生の教訓があったのである。ぼんくらな宮根誠司(54)のツッコミのせいで流されてしまったのであらためてご注進させていただく。転校デビューするときはいちばん最初に話しかけてきたヤツに気をつけろ。ご臨終の際にはぜひあなたもご遺訓として活用されたい。
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もうひとつ、経験ではなくても、自分のプロフィールやバックボーンを前面に出してそれをもとに率直に語るという方法もある。たとえばこれ。
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【JKタレント・井上咲楽 小出恵介の淫行騒動に「ズルいなと思いました」】
《11日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)で、現役女子高生タレントの井上咲楽が、未成年者との淫行騒動を引き起こした小出恵介を批判した。
9日発売の週刊誌「フライデー」は、小出が17歳の未成年女性と飲酒した上、淫行に及んだと報じた。小出と所属事務所・アミューズは、この報道を事実と認めて謝罪している。MCの東野幸治は、この話題に関し「ワイドナ現役高校生」の井上に意見を聞いた。
井上は、「そんなカッコいい俳優さんいたら、悪いことって分かっていても(誘われた先に)行っちゃうかも知れないですね」と、未成年女性の立場に一定の理解を示す。そして、「そういう立場を利用して呼んだっていうのは、ちょっとズルいなと思いました」と、小出を非難したのだ。
コメンテーターの松本人志も「それは確かに」と、この井上の意見に同意をしていた。》
(※「トピックニュース」2017年6月11日配信)
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カッコいい俳優っていわれたらひっかかっちゃうかもしれないから、だからそんなのズルい、カッコいい俳優にめっきり弱いその足元を見透かして誘ってくるのはズルい、というわけである。誘い方の問題である。淫行スキャンダルという話題からは微妙にズレて、自分のわかりやすい分野に、かつ自分を可愛げにアピールしつつ引き込んでいる。
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ううむ。こういうことをやらせるとほんとうに女はウマい。とくに嬢といわれる方々に典型的なもののいい方である。正論、なにそれ? である。松本人志なんかイチコロである。で、エラそうに「それは確かに」なのだ。
嬢になりたい。(了)
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