若きプロ棋士、将棋の藤井聡太四段(14)の言葉づかいが話題だそうである。
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【「僥倖」担任の先生も調べた 藤井四段のすごい語彙力】
大阪市での対局に勝ち、公式戦の連勝記録を27に伸ばした藤井聡太四段(14)は、中学生らしからぬ言葉遣いにも注目が集まっている。17日も、朝日新聞記者のインタビューで将棋の魅力を聞かれた際に「醍醐味(だいごみ)」という言葉を口にした。
「実力からすると、望外(ぼうがい)の結果」(11連勝、4月4日)、「僥倖(ぎょうこう)としか言いようがない」(20連勝、6月2日)。毎回、対局後に大勢の報道陣に囲まれる藤井四段。あどけない表情からは想像もできないような難しい言葉を使って、謙虚に喜びを表現する。
醍醐味は、深い味わい、本当の面白さという意味。望外とは、望んでいる以上によいこと。僥倖とは、思いがけない幸運のこと。藤井四段が通う名古屋大教育学部付属中学校(名古屋市千種区)で担任を務める数学担当の大羽徹教諭(39)は「僥倖は、自分もどういう言葉なのだろうかと思って調べた」と笑う。
(※「朝日新聞デジタル」2017年6月17日配信)
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ふうん。中学生にとって「醍醐味」がそんなに驚くほど難しい言葉なのであろうか? 中学校教師がいくら数学担当とはいえ「僥倖」を調べた? そんなものなのかのう。いや、この朝日新聞の記者は論の立て方、記事の方向性を間違えているのである。
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藤井聡太の「醍醐味」「望外」「僥倖」がおもしろいのはそれが難しい言葉だからではなくて、するりと口から出てくることであろう。「醍醐味」「望外」「僥倖」くらいは小・中学校の授業でも出てくると思う。
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であるからそれは、知識としてはあるけれどももはや日常語ではない言葉たちを何気なしに操る少年、つまり大げさにいえば異世界からの侵入者に出くわしたような驚きなのである。
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その、自分の驚きの正体さえ掴めない記者の愚鈍のワリを食ったのが「藤井四段が通う名古屋大教育学部付属中学校(名古屋市千種区)で担任を務める数学担当の大羽徹教諭(39)」である。
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「『僥倖は、自分もどういう言葉なのだろうかと思って調べた』と笑う。」。意味がわからないとは書いていない。しかしサラッと読めばそう読める。たぶん大羽徹教諭は熟語としての成り立ちだとかについて話したのであろうけれども、それが記者が意図する「難しい言葉」の方向にねじ曲げて利用されているのである。バカに付き合わされて可哀想に。
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「醍醐味」「望外」「僥倖」が口からするりと出てくるということは、中学生・藤井聡太の読書経験と同世代間での孤独を連想させる。読書経験といってもこれまでの棋士としての驚異的な成長スピードを考えれば決してそれほど多くはない。なにしろ1日8時間程度の勉強はあたりまえというのがプロ将棋の世界である。であるから物理的にそれほど多くは読めないはずである。
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読めないけれども読んだものはアタマに入る。しかもどんなものを読んでこうなったかといえば、たぶん棋士が対局後にする感想戦とかインタビュー記事などではないかと思う。漢語をよく知っているからといってむかしのなんだか下世話な将棋小説などを読み耽っていたわけではないであろう。で、一を聞いて十を知るタイプなのだなきっと。
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こうした生活をしているので、とうぜん同世代の友人は少ない。あるいはいない。したがって将棋つながりで憶えられた藤井聡太の言葉は現代の感覚や風俗に晒されることなく藤井聡太のなかに温存されて、ときどきするりと出てくる。
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いってみれば藤井聡太は将棋の言葉で話をしているのである。将棋を呼吸しているのである。生きているまわりがぜーんぶ将棋。かなり恐ろしいけれどもそこまでしなければケタはずれの新人にはなれないのである。しかし学校の試験結果を見て「望外の歓び」などといえば、そちらでも一躍人気者になれるチャンスはある。
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藤井聡太の場合は読書というには正直いささか貧弱ではあるけれども、そこから学ぶチカラがスゴいのである。不肖私の読書も貧弱である。学ぶチカラも貧弱である。1冊読むとしばらくはその本の内容について考えている。「三百人委員会」とか「拷問と医者」とかロクでもない本がほとんどなのにだいたい数日から1週間くらいは考える。かなり不自由である。
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しかし世のなかには次々に読破していく多読派といわれる方々もいらっしゃる。たとえば小学校低学年で年間約300冊、そしてその後は700冊も読んでいたという芦田愛菜(12)である。
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なにを読んでいたかといえば伝記、ファンタジー、推理小説、歴史小説、純文学などなど。乱読である。たしかに子ども時代は物語がたいへん読みやすい。それにしてもスゴい。
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芦田愛菜ほどの多読派ではないけれども、海の向うの芸能界では「ハリー・ポッター」「美女と野獣」のエマ・ワトソン(27)もそうとうな読書家、そして本好きである。1週間に1冊の本を読み、ブッククラブを立ち上げ、そしてそのために女優業は1年間お休みなのである。しかしここで紹介するには少し年上だったかも。
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で、藤井聡太を擡頭著しい新世代のなかで位置づけるとする。卓球の平野美宇(17)・伊藤美誠(16)・張本智和(13)、サッカーの久保建英(15)などのグループではなく、芦田愛菜(12)と同じくくりであろうというのはご諒解いただけると思う。球技は苦手だっていうし、2人ともIQ高そうだし。エマ・ワトソンも10歳若ければねえ。
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藤井聡太のような、そして 芦田愛菜のような突出した能力をもつ子どもたちがその後のびのびと発展していけるかは、改めて日本の懐の深さと民度が問われるところでもある。日本は「平均」が好きで、とかくアタマがよすぎると嫌われがちなのである。とくにIQが高いと。迷惑なバカももちろん嫌われるけれども。
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それから、言葉づかいといえば首都圏連続不審死事件の木嶋佳苗死刑囚(42)も特徴的である。しかしこちらについては時間の余裕がないので股、おっと間違いた(by荒木経惟)、また明日。では、これにて。(了)
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